ローエングリン [音楽]
ルードヴィッヒ2世とヒトラーが好んだワーグナーのオペラなのでございますが、グランドオペラチックな豪華絢爛な「タンホイザー」と、「無調」への扉を開けた名曲「トリスタンとイゾルテ」にはさまれてチト影が薄いのでございます。T.Nはワーグナーの中では、タンホイザーのグランドオペラチックなところがどうも苦手でカイルベルトの振った盤を聴くまでは正直嫌いでございました。逆に抑制の効いて奥の深いローエングリンの管弦楽は大好きなのでございます。ライトモチーフの用い方はタンホイザーよりも効果的で、第2幕の「悪の夫婦」の悪巧みなぞ何度聴いても飽きません。
推薦盤はヨッフムのバイロイト。多分輸入盤しかないけれど、ドラマチック。チト時代がかっているけれども。前奏曲のっけから聖杯の清浄な世界とは程遠いねっちっこい節回しに驚くこと請け合い。なんといっても第1幕のラストの神前試合のシーンのテンポは強烈でT.Nは他の盤では満足できなくなってしまったのでございます。ある意味異常な行き過ぎた表現なのかもしれませんが一聴の価値ありでございましょう。ヨッフムという指揮者はムラッ気があって当たりとハズレの差が大きくまぁまぁというものはあまり無いのでディスクコレクター泣かせでもあります。どちらかというとスタジオよりライブで本領を発揮するタイプなので(ブルックナーはスタジオでも良い仕事をしてますね)音質に問題のある録音が多く、ナカナカ評価が難しい指揮者でもございますが、この録音「ノッタ」時のヨッフムの真価が表れている数少ない記録でもございます。
カイルベルトのバイロイトも渋めで好感が持てます。チト野暮ったいけれど。
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